残念なことに、NHKドラマ10で放映している「透明なゆりかご」が、来週で最終回を迎える。ドラマでは、主人公の高校生青田アオイが見習い看護師として働く産婦人科医院で、出産に関わる様々な経験をする。そして、自分と母親のこれまでの関係を見直してゆく。
ドラマでは、アオイには注意欠陥多動性障害がある、という設定になっている。精神科的には注意欠陥多動性障害だけではないように思われるのだが、それはさておき、その生まれ持った「発達障害」のためにアオイと母親の仲はしっくりいかなかった。アオイは、「自分は余計な人間、母親から愛されていない子」、という思いを拭い去ることができないままだった。しかしその思いは、産院での様々な事件を通して、少しずつ変化してくる。
例えば今回、第9回のストーリーでは、人の気持ちを察することが苦手なアオイが、性犯罪の被害にあった小学生の子に、「ゴメン、私わからないの。みんなが気付くことが気付けないの」と謝る。アオイはそのことがあってから、「自分が気付けない人間であることによって母親は苦しんできたのではないか」、という思いを抱くようになる。被害にあった小学生の女の子の気持ちを考えずに言葉を発して悲しませてしまったように、母親の気持ちを察することがきず、彼女を困らせてきたのではないか、と。
その日は夜通し悩み苦しんで徹夜してしまったアオイを、朝起きてきた母親は後ろからしっかりと抱きしめる。アオイは驚いてビクッとする。しかし母親の、「いままで色々あって互いに傷つけあったけれど、私は決してあなたから離れない」という言葉を聞いて、アオイも涙を流し母親の手を握りしめる。このシーンは美しかった。
透明なゆりかごのテーマソングも、つつましやかな、おだやかな、少し物悲しい、心に沁みるいい歌だった。例えばチェロで弾けないかと想像してみたが、やはり人の声でないと、あの情感は出せないように思う。Charaという人が歌った「せつないもの」という歌だそうだ。私も歌ってみたいが、さまにならないだろう…残念。