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虫こぶ発見

 まだ息子が小さい頃、近くの国上山や弥彦山などをよく訪れた。半日ほどで手軽に登れるので、新緑や紅葉のころは頻繁に出かけた。息子自身はさほど行きたくなさそうだったが、そんなことを言うと怒られるので(大変な親だったと反省している)、文句も言わずに、しかし大抵はさほど面白くもなさそうに登っていた。


 息子が大きくなり、それらの山に行く機会もめっきり減った。今年の秋は、妻と二人で国上山に1度登ったきりで、それが紅葉の中を歩いた唯一のイベントになった。子どもというダシがなければ自分はこんなにも自然からも遠ざかるものか、と情けない思いがする。


 しかし、その紅葉狩りで、面白いものをみつけた。


 妻と国上山麓の「てまりの湯」から登り始め、「こもれびの広場」を抜けて小高い丘で一服お茶を飲んでいたときのこと。ふと傍らを見ると、ちょうどカーリングのストーンのような形をした、直径15mmほどの少し茶色がかった緑色の物体が、高さ70cmほどの幼木の枝についているのが目にとまった。


 その幼木の葉は、すでに全部落ちてしまっていた。その木の実がついているのか、とも思ったが、他の枝には同じような物はついていない。その実のような物には、産毛のような繊細な毛が生えていて、どうも「生き生き」し過ぎている。栗やドングリの実のような「休止状態」という印象に乏しいのだ。


 なんとも不思議な感じがしたので枝から採ってみると、切り口は淡いレタスのような緑色だった。まだ枯れていない葉のように、折り採られる直前まで枝から栄養を受け続けていたようだ。


 傍らにいた妻が、それは「虫こぶ」ではないか、と言った。虫こぶというものを、それまで私は知らなかった。試しに指で2つに割ってみると、その割れ目から2mmほどの真っ黄色のウジのような虫が4~5匹蠢き這いずり出てきたので、何だか気持ち悪くなり捨ててしまった。


 後でネットで調べると、「虫こぶ」は昆虫だけでなく、ダニや線虫、さらに菌類や細菌も作ることがあるらしく、色も形も様々あることが分かった。山や野原はよく歩いてきたつもりだが、今まで「虫こぶ」なるものが存在することを知らなかった。


 自分では大発見をしたように思ったが、それほど珍しいものを見つけたわけではないことを知り、少し残念だった。しかしそれでも、秋の晴れた日に、国上山のひだまり公園近くで「虫こぶ」なるものに出会えたのは、私には大きな出来事だった。

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